Bunshuが歩く。

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【Book】今まで読んだ小説の中で一番素晴らしい「あとがき」を見た。~「ボノボとともに」を読んで~

短い人生の決して多くはない読書経験の中で、僕はいくつかの小説を読んできました。

その中でもこの本の「あとがき」が一番よかったかなぁと思います。

 

ボノボとともに ー密林の闇をこえてー』

 

 お話は、ボノボという「ヒトに最も近いサル」と呼ばれる動物と少女の命を掛けた冒険物語です。

 

平和なサル、ボノボ

ボノボコンゴ民主共和国を唯一の生息地とする類人猿の一種で、そのDNAの98%以上がヒトと同じと言われています。

同じく、ヒトに近いと言われるチンパンジーは攻撃的であることが知られていますが、ボノボは争い好みません。

また、お互いの緊張状態を緩和するために老若男女問わず性行動を行うことが、この平和維持に寄与していると考えられています。

ヒトとの類似性、知性、平和的な社会集団などといった点から注目を集めている動物です。

 

 

 

物語の舞台は、そのコンゴ民主共和国です。

密猟者からボノボの子ども「オットー」を買い取った少女ソフィーは、母の働くボノボ保護センターに向かいます。

 しかし母が留守の間にコンゴ民主共和国で紛争が勃発します。

命からがら少女とオットーは母の元を目指します。

 

道中に起こる出来事にあわせて、コンゴ民主共和国の情勢とボノボの生態が描かれていきます。

日本と違ってコンゴ民主共和国がどのような状況に置かれているかということ、ボノボという類人猿の生態も簡単に知ることができます。

 

 

 

ボノボが好きな僕としては、ボノボコンゴ民主共和国の人たちが置かれている厳しい現状にどことなく心をざわつかせながら、興味深く読むことができました。

 

そして、この本は中身以外にのところもおもしろい工夫がされていました。

「あとがき」です。

 

 

 

読者に寄り添ったあとがき

「作者のあとがき」では、物語とは違った実際のコンゴ民主共和国の情勢について、ボノボの密売について情報提供されており、「実際のところどううなの?」という読者の疑問に答えています。

 

さらに「作者とのQ&A」という項目が続きます。

僕はこのような項目のある「あとがき」を初めて見ました。

 

そこには、なぜこの物語を書こうと思ったのか?取材するにあたっての困難は?取材してみて気づいたことは?コンゴ民主共和国ボノボの今後に必要なものは?などの質問に答えています。

 

小説を読んでみて、物語を書く動機や、取材の実際、といった点に興味が湧き作者の話を聞いてみたいと思うこともしばしばありました。

そのような思いをここまで丁寧に満たしてくれる「あとがき」はあまり見たことがありませんでした。

 

作者の考え、今後どうすべきかなども載っている点に驚きました。

作者はボノボの保護にはお金がかかることも認めており、寄付のための情報も記載しています。

 

訳者も同様に、ボノボについて知るにあたっての参考書をいくつか紹介しています。

こうしたらよいと思う、という意見を述べるだけでなく、そのための最初のステップとなる情報を提供している点に僕は感心しました。

その点が作者・訳者ともに読者に寄り添っていると思いました。

 

 

 

まずは目をむけること、気づくこと

多くの人がボノボの保護を支援するためにまずできることとして、作者は「目を向けること。そして、気づくこと」と述べています。

 

この本で扱われているのは遠いアフリカで起こっている出来事で、それがどう転ぼうとおそらく僕らには大きな影響はないでしょう。

ましてや、ボノボという一種の生物が絶滅したところで何も変わらないでしょう。

 

しかし、同じ地球で起こっていることに目を向け、気づいて、考え、行動するしないを決めることと、目を向けもしないで気づかないことは結果は同じでも雲泥の差を生むように僕は思います。

 

世の中は知らないことだらけで、すべてのことを知るのはどう考えても不可能ですが、コンゴ民主共和国で起きていること、ヒトに一番近いサルが瀕している現状は知っておきたいです。

これは僕が生き物が好きだからということもあるでしょうが、人間の活動によって命を脅かされている生き物について、もっと考える時間が増えたらいいなと思います。

そして僕にできることを考えていきたいです。

 

 

 

チャンチャン♪